ごあいさつ
日本には30000種を超える昆虫が生息しているといわれています。地球上でもっとも繁栄しているといっても過言ではないでしょう。そのうち鱗翅目(蝶と蛾)は6000種を超え、その生態は様々で、昆虫の中でも大きなグループを形成しています。
古くから日本ではイナゴやハチノコなどを食べる習慣があります。昨今、昆虫食についての話題がよく取り上げられるようになりました。しかし耳にするのは主に、コオロギやカイコなど数種に限られています。コオロギは変態(蛹を経ること)をせず、飛翔しないため飼育が容易であること、カイコは養蚕の歴史から飼育に関する知見が多いことが理由として挙げられます。確かに30000種を超える種類すべての飼育技術を確立するのはとても難しいですが、その中から食用に適した種を見つけ出し、食用化にチャレンジすることは意義あることだと私は思います。なぜなら、他国に左右されない動物性のタンパク源を確保することができるからです。
現在、日本人の主な動物性タンパク源は、牛・豚・鶏、そして魚介類です。牛・豚・鶏は国産のものもありますが、餌のほとんどを輸入に頼っています。魚介類は環境の変化や隣国との関係で漁獲量が年々減っている種もあります。みなさんもスーパーで買い物をするとき、魚の値段が高くなったなーと思うことがあるかと思います。
昆虫を食用化することに意義があるとはいえ、問題もたくさんあります。まず、嫌悪感。どれだけ必要性を語ったところで昆虫に対する嫌悪感があっては、食べてもらえません。結局、ゲテモノ扱いとして好奇心の強い方向けに提供されている現実があると思います。次に安全性に対する信頼。未知の寄生虫などがもしいたとしても加熱をすればほとんど問題ないと私は思っています。しかし、種によっては食草食樹のアルカロイド類を蓄積しているものもある可能性があり、野生の昆虫を食べるのは知識が必要だと思っています。私が今一番危惧しているのは、人工飼育した昆虫を食用として販売するケースです。昆虫用の飼料を規制する仕組みがないため、抗菌剤等の薬剤を使用した飼料の毒性が検証されないまま個人がネット販売など行ってしまう可能性があることです。いずれにしても、まだ昆虫食は基礎研究の段階であり、すぐにビジネス一辺倒になる傾向に不安を感じざるを得ません。
他にも乗り越えていかなければならない問題が山積みです。
私は小さいころからいわゆる昆虫少年で、特に鱗翅目(蝶や蛾)が大好きで、採集しては標本を作っていました。名古屋大学農学部にて昆虫生態学を学んだあと、国家公務員として分析業務に20年近く携わりました。その間も趣味として昆虫採集を続け、最近では子供と一緒に楽しんでいます。昨今の昆虫食ブームに対し「昆虫はこんなもんじゃない!もっと可能性がある!」という昆虫愛と、「衛生的に大丈夫だろうか?」という懸念から、妻の後押しを受けて一念発起して仕事を辞め、レピ食用蛾研究所を立ち上げるに至りました。微力ではありますが、自分の経験と知識が少しでも社会に貢献出来たらと思っています。一歩一歩進んでいきますので、どうか応援よろしくお願いします。
代表 磯村 要
沿革
2001年 名古屋大学農学部卒(昆虫生態学専攻)
2002年~ 国家公務員として主に分析業務に従事
シンガーソングライターとして全国各地でライブ活動
2012年~ 本格的に蛾の採集及び標本作成を再開
2019年 退職、昆虫食の研究を始める
2022年 レピ食用蛾研究所 創業
2024年 栄養士取得
現在に至る